「よいしょ」を減らして腰を守る機械浴槽の選び方
介護現場において、長年大きな課題のひとつとされている「腰痛」。特に入浴介助は、移乗や洗身など身体的負荷がかかることが多く、腰に負担がかかりやすい業務として挙げられることも少なくありません。
腰痛を軽くしたいと考えるとき、まず「入浴者を抱え上げる」動作に意識が向きやすいのではないでしょうか。しかし実際には、長時間の前傾や中腰の姿勢、シャワーや操作ボタンに腕を伸ばす動作など、介助時の小さな負担の積み重ねが腰への大きな負荷につながっているケースも多くあります。
そのため、介助技術や身体の使い方の工夫だけでなく、「どのような機械浴槽・周辺設備を選ぶか」という視点もとても重要です。ここでは、介助者の腰への負担軽減という観点から、機械浴槽の選定時にぜひ見直したい3つのポイントをご紹介します。
①「持ち上げない移乗」が腰をラクにする
入浴介助の中でも、最も身体への負担が大きい作業のひとつが「移乗」です。
ベッドからストレッチャーへ、ストレッチャーから浴槽へ。入浴者を抱えたり持ち上げたりする場面が多いほど、介助者の腰への負担は大きくなります。
特に、移乗先との高さが合っていない場合には、中腰のまま身体をねじったり、無理な姿勢で抱え込んだりする必要が生じやすくなります。
そこで1つめのポイントとなるのが、車椅子やベッドと入浴用ストレッチャーの「高低差をなくすこと」です。
電動昇降機能付きのストレッチャーであれば、車椅子や移動用ストレッチャーと高さを揃えやすく、介助者が無理に身体をかがめたり持ち上げたりせずに移乗しやすくなります。
(写真)電動昇降ウォークスルーストレッチャー RA-2550S
また機械浴槽の中には、「ジュスト」や「アダージオ サイドイン」のように、ストレッチャーを浴槽へ押し当て、担架部分をスライドさせてそのままドッキングできるタイプもあります。
(写真左)ジュストHK-2550
(写真右)アダージオ サイドイン HK-5250
入浴者を持ち上げて浴槽へ移す動作そのものを減らせるため、介助者の腰への負担軽減につながります。
腰への負担軽減を考える際、「利用者を持ち上げなくて済む構造か」という視点を持つことが、腰痛対策の第一歩になるのかもしれません。
②できるだけ「かがまない」ことが大切
腰への負担は、移乗時だけに発生するものではありません。特に洗身の際は、入浴者の身体を洗うために前傾の姿勢を長時間維持したり、抱え込んで身体の向きや位置を変えたりする場面が多く、慢性的な腰痛の原因になることがあります。
そのため、2つめのポイントはどれだけ「かがまずに介助できるか」という点です。そこで注目したいのは、ここでも「高さ」。
介助者の身長や体格は人によって異なります。そのため、設備の高さが固定されていると、ある人にとっては作業しやすくても、別の人にとっては深い前傾姿勢を強いられることがあります。
負担軽減に有効なのは、やはり前出の電動昇降機能を備えたストレッチャーです。簡単に高さを調節できることで、介助者が過度に前かがみにならず、入浴者との距離を適切に保ちながら洗身しやすくなります。
また、洗身時の身体移動をサポートするスライドマットも、介助負担の軽減に役立ちます。
(写真)電動昇降ウォークスルーストレッチャー RA-2550S
入浴者の身体を安定させながら位置が調整しやすくなることで、抱え込んで体を支える負担が減り、ストレッチャー上での洗身スペースも確保しやすくなります。
腰痛対策というと、持ち上げる「重さ」に注目しがちですが、実際には「かがみ続けない」「抱え込み続けない」ことも、同じくらい重要なのです。
③「歩き回らなくていい」設計が入浴時の安心にもつながる
意外と見落とされやすいものの、浴室内での細かな移動や姿勢を変える回数も、実は大きな疲労要因になります。
たとえば、浴槽の反対側へ回り込むために何度も移動したり、操作パネルに手を伸ばすために大きく前かがみになったりといった動作です。一つひとつは小さくても、日々繰り返されることで身体への負担は蓄積していきます。
こうした負担軽減の視点から3つめに注目したいのが、無理のない姿勢で介助でき、限られた空間でも効率よく動ける動線づくりです。
(写真)ジュストHK-2550、電動昇降ウォークスルーストレッチャー RA-2550S
「ジュスト」のウォークスルー構造を備えたストレッチャーであれば、ステップ台に立ち、身体を大きく乗り出すことなく浴槽のすぐ側面から介助できます。浴槽周囲での移動負担や前傾姿勢の軽減につながり、常に入浴者に近い距離にいられるので安心です。
また、「アダージオサイドイン」のように、操作パネルやハンドシャワーなど必要なものがすべて手元に配置されていることは、身体的負担だけでなく、介助時の安全性や作業のしやすさにも影響します。
(写真)アダージオ サイドイン HK-5250
介助負担を減らすうえでは、機能性の高さだけでなく、介助者が「自然な姿勢で動けるか」「少ない動作で効率よく動けるか」という視点も欠かせません。
機械浴槽を見直すことは「介助環境の改善」にもつながる
腰痛対策というと、介助技術の習得や職員の意識改善に目が向きがちです。しかし実際には、設備設計そのものが、介助負担に大きく影響しているケースも少なくないのです。
・持ち上げなくて済むか
・前傾姿勢を減らせるか
・無理なく操作できるか
・不要な移動を減らせるか
こうした視点で機械浴槽や周辺の設備を見直すことは、介助者の身体的な負担軽減だけでなく、より安全で持続可能な入浴介助の環境づくりにもつながります。
介助者の「よいしょ」を減らせるかどうか―
機械浴槽を選ぶ際の大切な視点のひとつとして、考えてみてはいかがでしょうか。